納棺体験・・

先日、近くのお寺様でお祭りがあり、夫婦で出かけてみた。
お寺のお祭りとはいっても、様々な出店があり、おおいに賑わっていた。
その中で、神社の祭りと異なる点が数点あった。
数珠作りや、写仏コーナーや、また珍しい「納棺体験」コーナーである。

私たち二人は、数珠作りをやり、その後「納棺体験」コーナーの前にさしかかった。
「どなたか納棺を体験してみませんかぁ・・」
ユニフォームを着たスタッフ(お坊さん)が声をかける。

私は、おもむろに嫁に向かって、「入ってくる」と言い残し、お棺の方に向かいました。
私たちの周囲(親類)では、ここ数年お弔いが続いており、そのイメージからまだ抜け出していない嫁は、私を引き止めるのでした。
きっとイメージが重なったのでしょう。不吉な・・と。
私は、「こんな機会めったに無いじゃないか」と言ったように覚えています。

「はい、どうぞ」とスタッフの声。
私は、ちょっと躊躇し、
「お棺の中に入るのに、何か作法はあるのですか? 左の足から入るとか」
「何もありません。普通は、ドンと入れるだけですから」
それもそうだな・・と私も納得したのでした。

そしてスタッフの指示のままに、お棺の中に横たわりました。
白く薄い布団がかけられ。ふたをされました。
顔のぞき窓から、スタッフが顔を覗かせ、「何か言い残すことはありませんか?」などと声をかける。
私は「えっ?」と思いながら、「いや、ありません」と応える。
「それでは扉を閉じますよ」
視界が消え、一瞬にして、お棺の中は、真っ暗になった。

そう、死ぬとは、こういうことなのだ。・・と、その時、私は思ったのでした。
何もない。真っ暗。・・

しばらくして、
「はい、お疲れ様でした。」
とスタッフの声とともに、ふたが外され、パッと明るい光がお棺の中に差し込んできて、まぶしいのである。

「おかえりなさい!」
と、遠くから嫁の声がする。
私は、何か不思議な、複雑な気持ちで、むっくりと起き上がったのでした。

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