天国の兄への手紙・・(そして、兄のこと)

兄さん、安らかに眠ってください。
今日10月30日で、兄さんが亡くなってから、ちょうど30年になりました。
そして、38歳で亡くなった兄さんの歳を、弟の私は、今年で28歳も上回ってしまいました。

樺太より引き揚げてきた私の家族は、父の頑張りで、私ども兄弟は不自由のない生活を送ることが出来るようになりましたが、3人兄弟の真ん中の兄さんはいつもその恩恵を受けることが出来ず、いつも弟の私にお鉢が回ってきて、兄さんは損の多い人生だったように感じております。
洋服は長男のお下がりで、弟に回す頃には破けてしまい、弟の私はいつも新品を買ってもらっておりいましたね。

また、父が家を新築したとき、兄さんは丁度高校を卒業の年で、兄さんは自分の部屋を一度も持つことなく家を出てしまい、弟の私だけが自分の部屋を持って高校生活を享受しました。
弟の私も、兄を思うとき、その不公平さを強く感じておりました。
けれど、その後も兄さんはいっさい不満をいうことなく、そのような弟を、実によく可愛がってくれました。
小学、中学を通して、身体も弟の私より小さく、相撲をとってはいつも弟に投げ飛ばされていましたが、本気でけんかすると兄は強く、調子に乗った私を戒めたあの一撃の痛みは、今も左顔面に宝物として大事に記憶しております。
その後の私は、兄を「強いんだ」と、一目置くようになったのです。

私が高校卒業後、専門学校の学生として兄のいる横須賀の海上自衛隊を訪ねるたびに、皆から愛されている兄さんの弟ということで、兄の先輩や同僚から、いつもいつも、本当に特別に歓待してもらったことは、そんな兄を誇りに思うと同時に、嬉しい思い出として、いつまでも私の記憶に残っております。

そしてその後、自衛隊を除隊し、会社勤めをしてからも、兄さんは、東京にひとり住む私をいつも気遣い、私が訪ねるたびに、いつもいつもおいしいものを食べさせてくれて、元気付けてくれました。
そんな兄に、いつの日にか恩返しをしてやろうと私は決めておりましたが、それを実行に移す前に、兄さんは天国へ召されてしまいました。

私の古いアルバムに小さく載っていた兄の写真は、次第にその存在がうすれていき、誰からも見てもらえない状態になっておりますが、私にとっての兄さんとの思い出は、歳をおうごとに光り輝いております…。

弟思いの、本当に優しかった兄さん、天国で安らかに眠ってください。(弟より)

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