「うらおもて人生録」について…

「私はこの本では、生きていくうえでの技術に焦点を合せたつもりでおります。しかし、生きていくということは、もちろん、技術だけの問題ではありません。どう生きればよいのか、どう生きたいのか、そうするにはどうすればよいのか、自分が生きる姿勢を定めるための諸問題が山積みしており、特に若い人に向かって人生を語る場合、そのことの重要さを私自身もしみじみ感じます。」(色川武大著「うらおもて人生録」の帯より)

・・自分はどういうふうに行きたいのか。
この設問は大げさなばかりではなく、具体的な答えを出しにくいんだな。
あまりにも範囲が広すぎるし、また、すべてが自分の思い通りに行くもんじゃないということもみんな承知しているからね。

それじゃ、
・・自分は、こういう行き方だけはしたくない。
この方が、具体的な答えを、はるかに出しやすい。
それで、いくつかの答えを出して、消去していくんだ。
そうするとね、次第に範囲がせばまっていって、すこしづつ、軸になるべきものが見えてきたりする。
どちらかといえば、欠点や悪条件の方が、軸として捕まえやすい。・・
(本文内より)

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※この「うらおもて人生録」は、昭和58年(1983)8月より、翌59年8月まで、56回にわたって毎日新聞の日曜版に連載されたものです。

当時、我が家では毎日新聞をとっていたようで、何気なく眼にしたこの「うらおもて人生録」の記事を、私は毎週楽しみにする様になり、その内に、記事を切り抜いて保存したりするようになってました。
しかし、途中読めなかった記事もあったりで、悔しい思いをしている折、一冊の本となって出版され、私はすぐに書店にて求めたのでした。

この記事の作者は、本名の色川武大と、阿佐田哲也というペンネームを使い分け、阿佐田哲也では、「マージャン放浪記」などというベストセラー小説も残している。
生い立ちなどは、学歴もなく、不良少年であった。
その不良少年が大人になり、その大人が書いた人生の参考書だから、その視点がすごく面白いし、また真髄を語っており、そして人間の本質を鋭くついている。

この本は、私のバイブル的一冊となった。

その本を、私は数十年ぶりに書棚に発見して、そして今回読み返してみたのだった。
さすがに面白く、それに若かった私が、当時むさぼるようにして読んだ内容が懐かしいのでした。
人生、9勝6敗がちょうど良い。時々は負けを入れること。負けの受け入れ方で人生が決まる。勝ちすぎない、負けすぎない、などなど・・
おそらく、こういう作家は、今後出てこないのではないでしょうか。・・

そんな色川武大さんも、この本の出版5年後の1989年4月10日に60歳で亡くなりました。
ここに、謹んで、ご冥福をお祈りさせていただきます。

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